発熱や下痢・嘔吐のとき、あるいは真夏の熱中症対策に役立つ「経口補水液」。ドラッグストアで市販品を購入することもできますが、実は家庭にある材料3つで手軽に作ることもできます。
この記事では、WHO(世界保健機関)推奨の配合をもとにした経口補水液の作り方から、正しい飲み方・注意点まで詳しくまとめました。いざというときのために、ぜひ覚えておいてください。

経口補水液とは?スポーツドリンクとの違い
経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)は、脱水症状の改善を目的として、水分・塩分・糖分をバランスよく配合した飲料です。
スポーツドリンクとよく比較されますが、両者には明確な違いがあります。
| 項目 | 経口補水液 | スポーツドリンク |
|---|---|---|
| 主な用途 | 脱水時の水分・電解質補給 | 運動時の水分補給 |
| ナトリウム量 | 多め(脱水補正向き) | 少なめ |
| 糖分量 | 少なめ | 多め(エネルギー補給目的) |
| 味 | やや塩辛い | 甘くて飲みやすい |
脱水症状が出ているときにスポーツドリンクを飲んでも、ナトリウムの補給量が足りないことがあります。脱水が疑われる場合は、スポーツドリンクではなく経口補水液を選ぶのが適切です。
自宅でできる経口補水液の作り方
以下は、WHOの推奨に基づいた基本的なレシピです。
基本レシピ(約1リットル分)
- 水:1リットル(水道水の場合は一度煮沸して冷ましたもの)
- 食塩:3g(小さじ1/2)
- 砂糖:40g(大さじ4と1/2)
作り方の手順
- 清潔な容器(ペットボトルやピッチャーなど)を用意する
- 水道水を使う場合は、一度沸騰させてから人肌程度(約35~40℃)に冷ます
- 食塩と砂糖を正確に計量する(キッチンスケールの使用を推奨)
- 容器に水を入れ、食塩と砂糖を加えてよくかき混ぜる
- 完全に溶けたら完成
塩3gと砂糖40gは目分量だとぶれやすい分量です。0.1g単位まで量れるデジタルのキッチンスケールがあると、毎回同じ濃さで作れます。

飲みやすくするアレンジ
基本レシピだけだとやや塩辛く感じることがあります。その場合は、レモン果汁を少量(小さじ1程度)加えると、さっぱりして飲みやすくなります。ただし、砂糖や塩の量を自己判断で大幅に変えるのは避けてください。電解質のバランスが崩れる可能性があります。
経口補水液の正しい飲み方
脱水時の飲み方
下痢や嘔吐による脱水のときは、一度にたくさん飲むのではなく、スプーン1杯ずつ、5分おきくらいのペースでゆっくり口に含みます。一気に飲むと嘔吐を誘発してしまうことがあるためです。
熱中症対策での飲み方
屋外での作業や運動中に大量の汗をかいたときは、15~20分おきにコップ半分(約100mL)程度を目安に飲みましょう。意識がはっきりしない場合や自分で飲めない場合は、すぐに医療機関を受診してください。
飲む量の目安
- 成人:500mL~1リットル/日(症状に応じて調整)
- 幼児(1~6歳):300~600mL/日
- 乳児(1歳未満):体重1kgあたり30~50mL/日(医師に相談のうえで)
自家製経口補水液の注意点
- 作った当日中に飲みきること。手作りの場合は保存料が入っていないため、雑菌が繁殖しやすい
- 冷蔵庫で保管し、常温で長時間放置しない
- 乳幼児や高齢者に与える場合は、塩分濃度の誤差が体に影響しやすいため、可能であれば市販の経口補水液を使うほうが安心
- カリウムが含まれていないため、下痢による脱水にはカリウムを含む市販品のほうが適している場合がある

経口補水液が必要な場面
経口補水液は「脱水時専用の飲料」であり、日常的に飲むものではありません。以下のような場面で活用します。
- 発熱・下痢・嘔吐による脱水のとき
- 熱中症の初期対応として
- 大量に汗をかいた後の水分・電解質補給
- 高齢者の食欲不振時の水分補給サポートとして
逆に、脱水の症状がない健康な状態で大量に飲むと、塩分の摂り過ぎになる可能性があります。普段の水分補給には水やお茶を基本とし、経口補水液は必要なときだけ使うようにしましょう。
市販の経口補水液の選び方
ドラッグストアやコンビニで購入できる市販の経口補水液にはいくつかのタイプがあります。
液体タイプ
すぐに飲めるので緊急時に便利です。代表的な製品としてはOS-1(大塚製薬)が知られています。まとめ買いしておけば、家族が体調を崩したときにすぐ手が届きます。実際の価格や内容量は各ショップで確認してみてください。
粉末タイプ
持ち運びやすく、水に溶かして使います。防災グッズとしてストックしておくのにも向いています。
ゼリータイプ
嘔吐がひどくて液体が飲みにくいときや、小さなお子さんに与えるときに役立ちます。少量ずつ口に入れられるのがメリットです。
災害時の備えとして経口補水液を知っておこう
地震や台風などの災害時は、水道が止まったり医療機関が混雑したりして、十分な脱水対策ができないことがあります。そんなときに経口補水液の作り方を知っていれば、家族の健康を守る手段のひとつになります。
備蓄のポイント
- 粉末タイプの市販経口補水液(OS-1パウダーなど)を防災バッグに入れておく
- 砂糖と塩は長期保存できるため、分量メモと一緒に保管しておく
- ペットボトルの水(軟水・500mL)を多めにストックしておけば、経口補水液もすぐに作れる
防災グッズの中に、経口補水液の材料と作り方のメモを入れておくだけでも、緊急時の対応力がぐっと上がります。粉末タイプは軽くてかさばらないため、防災バッグに入れる備えとして選ばれています。
高齢者の脱水予防と経口補水液
高齢者はのどの渇きを感じにくくなるため、気づかないうちに脱水症状が進んでいることがあります。特に夏場の室内でも熱中症や脱水が起こりやすく、注意が必要です。
高齢者に経口補水液を活用する際のポイントは以下の通りです。
- 「のどが渇いてから飲む」のではなく、時間を決めて少量ずつ飲む
- 味が苦手な場合はゼリータイプを活用する
- 持病がある場合は、塩分・カリウムの摂取量についてかかりつけ医に確認してから使用する
- 食欲がないときの栄養補給としても活用できるが、あくまで水分補給が主目的であることを忘れない

子どもの脱水サインと経口補水液の使い方
小さなお子さんは大人よりも脱水になりやすく、かつ自分で症状を訴えることが難しいです。以下のサインに注意しましょう。
- おしっこの量が減る・色が濃くなる
- 泣いても涙が出ない
- 唇や口の中が乾いている
- ぐったりして元気がない
- 皮膚をつまんでも戻りが遅い
このようなサインが見られたら、経口補水液をスプーンで少しずつ与えてください。乳幼児に自家製の経口補水液を与える場合は、計量の誤差が影響しやすいため、できれば市販品を使うのが安心です。液体を嫌がるお子さんには、スプーンですくえるゼリータイプを選ぶご家庭もあります。
Q&Aコーナー
Q. 経口補水液はスポーツ後に飲んでもいい?
激しい運動で大量に汗をかいた場合は有効です。ただし、軽い運動程度であればスポーツドリンクや水で十分です。経口補水液は塩分が多めなので、脱水の程度に応じて使い分けてください。
Q. 砂糖の代わりにはちみつを使っても大丈夫?
大人の場合は、砂糖の代わりにはちみつを使うことも可能です(約大さじ2杯が目安)。ただし、1歳未満の乳児にはちみつは絶対に与えないでください(ボツリヌス菌のリスクがあるため)。
Q. ポカリスエットで代用できる?
ポカリスエットは糖分が経口補水液より多く、ナトリウムは少なめです。軽度の脱水には使えますが、下痢や嘔吐による中等度以上の脱水には、経口補水液のほうが適しています。
経口補水液にまつわるよくある誤解
経口補水液は正しく使えば非常に効果的ですが、誤った認識で使ってしまうケースもあります。ここでよくある誤解を整理しておきましょう。
- 「日常的に飲むと健康になる」は誤り:経口補水液は脱水時のための飲料であり、健康な状態で毎日飲むと塩分の摂り過ぎになる可能性がある
- 「スポーツドリンクと同じ」は誤り:成分のバランスが異なるため、目的に応じて使い分けることが重要
- 「手作りと市販品は同じ」は誤り:市販品はカリウムなど自家製では補えない電解質も含まれており、特に下痢による脱水には市販品が適している
- 「冷たくして飲んだほうが良い」は必ずしも正しくない:嘔吐がひどい場合は常温のほうが胃に負担が少ないこともある
まとめ
経口補水液は、水1リットル・食塩3g・砂糖40gというシンプルな材料で家庭でも作ることができます。ただし計量の正確性が重要で、作った当日中に飲みきるのが鉄則です。
脱水が心配な場面では経口補水液を上手に活用し、日常的な水分補給は水やお茶を基本にすることで、バランスの良い水分管理ができます。


