マラソンやランニングでは、走り始めてから完走するまでの間に大量の汗をかきます。喉の渇きを感じた時点ではすでに体の水分が2%以上失われているとされ、パフォーマンスの低下や脱水症状につながるリスクがあります。
特にフルマラソンでは数時間にわたって走り続けるため、給水のタイミングや飲む量を事前に把握しておくことが完走のカギになります。この記事では、マラソン・ランニング時の水分補給の基本、給水所の活用法、適した飲み物について解説します。

マラソン中にどれくらいの水分が失われる?
ランニング中の発汗量は気温・湿度・走るペース・体格によって異なりますが、1時間あたり500〜1,000mLの汗をかくのが一般的です。フルマラソン(42.195km)を4〜5時間で完走する場合、トータルで2〜5Lの水分が失われる計算になります。
体重の2%の水分が失われるとパフォーマンスが低下し始め、3%を超えると体温調節機能に支障が出るとされています。体重60kgの人であれば、1.2kg(=約1.2L)以上の水分を失わないよう管理することが重要です。
- ランニング中は1時間に500〜1,000mLの汗をかく
- 体重の2%の水分喪失でパフォーマンスが低下する
- フルマラソンでは2〜5Lの水分が失われる可能性がある
自分がどれだけ汗をかくタイプなのかは、走る前後で体重を量ると数字で見えてきます。100g単位まで表示できるデジタルの体重計があると、変化を追いやすくなります。
マラソン大会での給水タイミング
レース前
スタートの2〜3時間前から少しずつ水分を摂り、スタート30分前までにコップ2〜3杯(400〜600mL)を飲み終えておくのが理想的です。直前に一気飲みすると胃に負担がかかり、走り始めてからの不快感につながります。
レース中
マラソン大会では通常、約5km間隔で給水所が設置されています。この間隔は約15〜25分に1回の頻度に相当し、給水の理想的なタイミングと一致しています。
1回の給水量は100〜250mL(紙コップ半分〜1杯程度)が目安です。1時間の中で合計500〜1,000mLの水分を摂るイメージで、各給水所で少しずつ飲むのがベストです。
レース後
ゴール後は失った水分をしっかり補給します。レース後2時間以内に体重減少分の150%の水分を摂ることが推奨されています。体重が1kg減っていたら、1.5Lの水分を摂る計算です。

給水所での紙コップの飲み方のコツ
マラソン大会の給水所では紙コップで水やスポーツドリンクが提供されます。走りながら紙コップで飲むのは意外と難しいですが、以下のコツを覚えておくとスムーズです。
- 紙コップの上部を折り曲げてすぼめる:口が細くなり、走っても中身がこぼれにくくなる
- 受け取ったら軽くペースを落とす:完全に止まる必要はないが、ジョグ程度にペースダウンすると飲みやすい
- 2〜3回に分けて飲む:一気に飲むとむせる原因になるため、少しずつすすりながら飲む
- 水とスポーツドリンクの両方がある場合は使い分ける:序盤は水中心、後半はスポーツドリンク中心が一般的
マラソンに適した飲み物
水
基本の水分補給として。特にレース序盤は水で十分です。顔や首にかけてクールダウンにも使えます。
スポーツドリンク
汗で失われるナトリウムなどの電解質と、エネルギー源となる糖質を同時に補給できる優れた飲み物です。特にレース後半ではスポーツドリンクの方が体力維持に有効です。練習で毎回ペットボトルを買うとかさむので、粉末タイプを箱で用意して自分で作っているランナーも多いです。
ジェル・エネルギー補給食品
水分補給とは別に、エネルギー切れ(ハンガーノック)を防ぐためにエナジージェルを携行する選手も多くいます。ジェルを摂取する際は水と一緒に飲むことで吸収がスムーズになります。
水分の摂りすぎにも注意が必要です。必要以上に大量の水を飲むと「低ナトリウム血症(水中毒)」を引き起こすリスクがあります。喉の渇きと体重の変化を目安にして、適切な量を摂るようにしましょう。
レース前日から当日朝の過ごし方
本番のコンディションは、前日からの過ごし方でも変わります。前日はこまめに水分をとって、体を潤った状態にしておくのが理想です。ただし一度に大量に飲んでも余分な水分は排出されてしまうため、少量ずつ回数を分けて摂るのがポイントです。
当日の朝は、スタートの2〜3時間前までに朝食と一緒に水分を摂り、その後もこまめに口を湿らせておきます。カフェインの多いコーヒーやエナジードリンクは利尿作用があるため、朝の水分補給のメインにはしないほうが無難です。前日にアルコールを飲みすぎると脱水傾向になりやすいので、量はほどほどにしておきましょう。
スタート直前に慌てて大量の水を飲むのは避けましょう。胃に水がたまった状態で走り出すと、腹痛や不快感の原因になります。前日と当日朝に分けて、余裕を持って水分を整えておくのが失敗しないコツです。
アイソトニックとハイポトニックの使い分け
スポーツドリンクには大きく分けて「アイソトニック飲料」と「ハイポトニック飲料」の2種類があります。浸透圧の違いで吸収のされ方が変わるため、シーンに合わせて選ぶと水分補給がより効率的になります。
- アイソトニック飲料:体液とほぼ同じ浸透圧で糖質も多め。エネルギー補給を兼ねられるため、レース前や運動前の補給に向く
- ハイポトニック飲料:体液より浸透圧が低く糖質が少なめ。汗をかいて体内の浸透圧が下がった運動中は、こちらの方が水分の吸収が速いとされる
つまり、スタート前はアイソトニック、走っている最中はハイポトニックという使い分けが理にかなっています。市販のスポーツドリンクを2倍程度に薄めると、簡易的にハイポトニック寄りに近づけられます。自分の胃腸に合うかどうかは、必ず練習で試しておきましょう。
暑い日のレースで気をつけたいこと
気温が高い日は発汗量が一気に増え、脱水や熱中症のリスクが高まります。夏場や残暑のレースでは、給水の回数と量を平常時より多めに調整するのが安全です。次のような対策を組み合わせましょう。
- 体を暑さに慣らしておく:本番の1〜2週間前から、暑い時間帯に軽く走って汗をかく習慣をつけておくと、体が発汗や体温調節に順応しやすくなる
- 給水所で体を冷やす:水を飲むだけでなく、首の後ろや手首など太い血管が通る部分に水をかけると体温が上がりにくい
- スポンジやかぶり水を活用:暑い大会ではスポンジが配られることもある。体を濡らして気化熱で冷やすと消耗を抑えられる
スポンジが配られない大会もあるため、水に濡らして絞ると冷たくなる冷感タオルを1枚持っておくと、給水所で首元を冷やす手段が増えます。
逆に涼しい季節や冬のレースでは、汗をかいている自覚が薄くても水分は失われています。喉が渇いていなくても、こまめに口を湿らせる程度に給水しておくと後半のバテを抑えられます。

練習時の水分補給で本番に備える
レース本番で失敗しないためには、練習の段階から給水の練習をしておくことが大切です。
- 練習前後の体重を計測する:どれくらいの汗をかくかが数字でわかり、自分に必要な水分量の目安になる
- 走りながら飲む練習をする:紙コップやハンドボトルで走りながら飲む動作に慣れておく
- スポーツドリンクとの相性を確認する:大会で使われるブランドが事前にわかる場合は、それを使って練習しておくと胃腸トラブルを防げる
マラソンの水分補給に関するQ&A
Q. 給水所は必ず利用すべき?
序盤は体の水分が十分に保たれているため、すべての給水所で飲む必要はありません。ただし、後半は脱水が進むため、少なくとも5km〜10kmごとに1回は給水することをおすすめします。
Q. 自分で飲み物を持って走ってもいい?
ランニング用のハンドボトルやウエストポーチ型のボトルホルダーを使えば、自分の好きなタイミングで飲むことができます。給水所が混雑するリスクも避けられます。腰に巻くタイプのボトルポーチなら、手をふさがずに走れるので、練習でも本番でも使い回せます。
Q. 給水で胃が重くなってしまうときは?
走りながらの給水で胃が重く感じる場合は、一度に飲む量を減らして回数を増やすとよいでしょう。冷たすぎる飲み物は胃腸に負担がかかることがあるため、常温に近い温度のものを少しずつ飲むと楽になります。日頃の練習で自分に合う量と温度を見つけておくと、本番でも安心です。
Q. 10kmレースでも給水は必要?
10kmレースは40分〜1時間程度で終わるため、事前にしっかり水分を摂っていれば途中の給水なしでも完走できるケースが多いです。ただし、気温が高い場合や汗をかきやすい体質の方は、中間地点で少し飲んでおくと安心です。
Q. 走る前にどれくらい前から水分を摂ればいい?
スタートの2〜3時間前から少しずつ摂り始め、30分前までにコップ2〜3杯を飲み終えておくのが目安です。直前の一気飲みは胃に負担がかかり、走り出してからの不快感につながります。前日の夜から意識して水分をとっておくと、当日のコンディションが安定しやすくなります。
Q. カフェイン入りの飲み物は給水に向く?
コーヒーやエナジードリンクなどカフェインを含む飲み物には利尿作用があるため、レース中のメインの水分補給には向きません。スタート前の目覚まし程度に少量とるのは問題ありませんが、水分補給は水やスポーツドリンクで別に行いましょう。
Q. 冷たい水と常温の水、どちらがいい?
暑い日は体温の上昇を抑えられる冷たい水が飲みやすく感じられますが、冷えすぎた水を一気に飲むと胃腸に負担がかかることがあります。少しずつ飲むのが基本です。寒い季節は常温に近い方が体を冷やしすぎず、胃にもやさしいとされています。
マラソンの水分補給は、練習時から自分に合った量とタイミングを見つけておくことが成功の秘訣です。レース当日に慌てないよう、日頃のトレーニングから給水の習慣を意識してみてください。


